同居人日和 blog

こころ踊るドラマに出会えたら幸せ!と思う、アラ還間近のプレ主婦です。

『楽園』上・下 宮部みゆき:著 つらつらと

読書感想文はドラマ感想文よりも苦手なので書かないけど(え)、思ったことをつらつらと。
読み終わった後、何をしていても『模倣犯』が頭から離れない。もちろんこの作品があの前畑滋子を主人公とした物語だから、しかも前畑滋子はあの事件からまだ立ち直っていなかったから、会話の中には拘留中のピース話も出てくるから、そして要所要所にあの山荘が関係してくるから…まぁ『模倣犯』の続編とも言えるわけですから仕方ないのかも知れないけれど、でもそれだけじゃない。前作『名もなき毒』を読んだときと同じ感覚。この3作に共通しているのは「我が儘で身勝手で稚拙な悪意」だと思うのです。ワタシはこれがとても怖い。何か正当性のある、もしくは恨み辛みという一般的にわかりやすい理由があってではなく、普通の人には理解できない(というかしたくない)自分本位な感情によって、あまりにも酷い犯罪や嫌がらせをする若者たちが怖くて仕方がないのです。人の弱みにつけ込んで支配するのが好き、邪魔をする奴は排除すればいい、自分の思い通りに行くのが当たり前、というそんな身勝手な感情で簡単に犯罪を犯していく加害者たちがモンスターのように思えてしまう。
宮部先生の物語には、被害者側だけではなく、加害者側の背景もちゃんと描かれていると思う。加害者たちにも哀しくて切ない物語が存在し、犯罪に至るまでの経緯も描かれてたりするわけだけど、どうしたって理解できない。だから怖くてたまらない。『模倣犯』を読んだ当時(2001年)、ヒロミやピースの章では読むのを一時止めるくらい怖かった。このふたりのあまりにも稚拙で身勝手な感情、そして残酷な犯罪過程に「なんで、なんでこーいう考え方なの?こーいう捉え方しかできないの?」と怖くて読むのを一時中断してしまった思い出がある(ワタシにはあり得ないけど2日間くらい"寝かせていた"/笑)。人って自分には理解できないことにぶつかると恐怖を感じるのかもしれない。
ワタシは読み終わった後「どよ〜ん」とするような救いのない物語が苦手で、だけどそんなワタシが宮部センセファンなわけだから、物語的には救いがないわけではない。悪意の塊ばかりが登場するわけではなく、今回の敏子さんのような善意の塊のような人や読んでいてホッとできる人も登場するし、一応ハッピーエンディング(犯人逮捕など)にはなっていると思うから。でも、裁かれる加害者たちは決して自分たちの罪をきちんと理解したワケじゃないんだよね。なぜ世間から責められるのか、なぜ罪になるのか、どうして自分たちばかり酷い目に遭うのか、わからないまま逮捕され拘留されている。刑が確定してもきっと、なぜ自分は罪に問われたのか?あんなことしなきゃ良かった、という反省と後悔ではなく、なぜ計画が失敗したのか、どうすれば完全犯罪だったのか、そして自分がこんな目にあっているのは○○のせいだ、と考えているような気がして。だから犯人逮捕がハッピーエンディングかというとそうじゃない気もする。そう思うとやっぱり怖いです。
6年前に読んだ『模倣犯』。宮部センセの作品は最低でも2回は読み返しているワタシにしては珍しく、まだ1度も読み返していない。そのくらいワタシにとっては重くて辛くて怖い作品だったけど、今とっても再読したい。あの当時とはまた違った感覚を味わえるのだろうか。