『名もなき毒』宮部みゆき:著
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 65回
- この商品を含むブログ (290件) を見る
女性アシスタントの人間関係トラブルと連続無差別毒殺事件と土壌汚染。何も関係ないように思えるそれらの出来事が「毒」というキーワードで見事に繋がっていく過程はさすがです。すごく優しい文章ではあるんだけれど、なんとなく『火車』の匂いも感じるような題材。
もしもワタシの身近にあの子がいたら…もしもワタシの身内だったら…って思うと読んでいて本当に怖かったし痛かった。でもまったくあり得ない話ではないよね。人は皆大なり小なり「毒」を抱えて生きているのかもしれない。その「毒」を奥底に隠し、小出しにしながら生きていくか、隠すことができずに周りにまき散らしてしまうしかないのか、その違いだけなんだもの。
ついこの間舞台『噂の男』を観たばかりで、これもまた人の「毒」「悪意」のオンパレードで(笑)、続けざまに心をグサッグサッとやられた感じではあるんだけれど…あ、もちろん舞台とこの小説は全然違うお話ですが。
『噂の男』作:福島三郎 潤色・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:堺 雅人/橋本じゅん/八嶋智人/山内圭哉/橋本さとし/猪岐英人/水野顕子
面白かったー!…っていうのか、唸らせられたー!…っていうのか、イタタタタ…(泣)っていうのか。とにかく本も凄いけど役者もスゴイっ!。2時間以上座りっぱなしだったけど、そんな時間を感じさせないほどの濃い空間。ラスト暗転になった瞬間に思わず胸に手を当てて「うわぁ…そう来たか…イタタ…でも、ブラボーっ!」って感じ。
「わはは」「じーん」「どっかーん」「あー、面白かったねー」の単純明快舞台も好きだけど、こんな風に終わってみるとほとんど救いようがない物語で、でも本の面白さと役者の力量のおかげでそんなに後味は悪くない、かといってスカッとするわけでもなく、でもなぜかとても充実した気持ちで一杯になる、そんな不思議な感覚(わかりにくいッスね)でした。まぁひと言で言ってしまえば"いやーな男たちのいやーな舞台"なんだけれども(笑)。
たくさん笑ってたくさん引いて。一番(座席にへばりつくほど)引いたのは「喜怒哀楽をすべて笑顔で表現する奴(byじゅんさん)」の「キュビズム!」姿…(涙)。しかし山南スマイルは舞台でも輝いておりましたですよ。